2011年3月10日木曜日

三井物産の子会社であるマルチグレイン社が先住民族の土地略奪に加担

 三井物産は2007年からマルチグレイン社に資本参加していたが、2011年1月に88%の株を取得して、子会社化した。[1]しかしこのマルチグレイン社が、先住民族の土地の略奪に関与しているとして告発されている。[2]

  シャバンチ民族に属するMaraiwatsede Indigenaの土地は1998年に政府によって認められたが、いまだ大半の土地は農園主によって違法に占拠され、森林が伐採され、大豆が生産されている。こうした違法占拠者の中に、マルチグレイン社と契約を結んでいるCapim Finoグループの一部であるコロンボ農園やマルチグレイン社に対して大豆引き渡しの契約を結んでいたMata Azul e Capim Fino農園が含まれているという。
 そもそもコロンバ農園などはIBAMA(ブラジル環境・再生可能天然資源院 )によって2008年に違法伐採等で差し押さえられた土地で大豆耕作を継続していたという。
 IBAMAは違法に生産された大豆の差し押さえを行ったが、マルチグレイン社はIBAMAに大豆を差し押さえられた被害者だと語っているという。

まとめ

 開発と権利のための行動センター 青西
 
[1]世界の食糧需要へ、ブラジル農業生産事業
http://www.mitsui.co.jp/business/challenge/grain/index.html
ブラジル農業生産・穀物物流事業マルチグレイン社株式の追加取得基本合意(子会社化)
http://www.mitsui.co.jp/release/2011/1190969_4047.html
[2]Soja pirata na Terra Indígena Maraiwatsede(2011/03/4) 
http://www.brasildefato.com.br/node/5836 
Conexões Sustentáveis São Paulo – Amazônia
Soja pirata em terra indígena
http://reporterbrasil.org.br/conexoes/?p=107(2011/2/11)
Caso: Soja pirata em terra indígena
http://reporterbrasil.org.br/conexoes/wp-content/uploads/2011/02/Resposta-Case-12.pdf

関連資料
No Centro-Oeste, soja é “remédio” contra a indolência(2010/9/28)
http://blogdosakamoto.uol.com.br/2010/09/28/no-centro-oeste-soja-e-remedio-contra-a-indolencia/
Impactos da soja sobre Terras Indígenas no estado do Mato Grosso (2010/7))
http://www.reporterbrasil.org.br/documentos/indigenas_soja_MT.pdf

2011年3月9日水曜日

農地収奪に反対するダカールからの要請

 要請文へのサインは次のサイトから

http://www.petitiononline.com/dakar/petition.html

 2011年世界社会フォーラムのためにここダカールに集まった、私たち、農民組織、NGO、宗教組織、労働組合、そしてその他の社会運動体は

 世界の農業者の大半を占める小農民そして家族農業者は、 
-自分たちや住民の日々の食料を充足させつつ、それぞれの国の食料安全保障と食料主権を保証し
-農村住民への雇用創出と、農村部における経済生活を維持という点において、均衡ある地域開発の鍵でもあり
-また環境を尊重しながら食料を生産し、将来の世代のために自然の富を守っていく
という点について最も望ましい立場にいることを考慮し、

 食料やエネルギー、鉱業、環境、観光業、投機、地政的利用などのいかなる理由であれ、何百万ヘクタールという面積を囲い込もうとする民間投資家や第三国による、近年の大規模な農地収奪は、地域コミュニティや先住民族や小農民、牧畜民、漁民のコミュニティから生計手段を奪い、自然資源へのアクセスを制約し、育てたいものを育てるという自由を侵害し、女性の土地へのアクセスや管理権に対する不公正を助長するといった点から、基本的な人権を侵害するものであることを考慮し、

 投資家やそれと共犯関係にある政府が、農村住民の食料への権利を脅かし、失業と農村部からの流出を強い、このことが貧困を深化させ、紛争を引き起こし、更には農業知識や実践、文化的アイデンティティーの喪失を引き起こしていることを考慮し、

 土地と人権の尊重はそれぞれの国の政府と議会の権能のもとにあり、政府や議会がこうした土地収奪に対してより大きな責任を担わなければならないことを考慮し、

 我々は諸国家の政府と議会に対して、現在、そして未来における大規模な土地収奪を早急に停止し、略奪した土地を返還することを要求します。私たちは諸政府に対して、土地のために闘っている運動への抑圧を中止し、また犯罪と見なすことをやめることを強く求めるとともに、拘束されている活動家を解放することを求めます。私たちは諸政府に対して、関係当事者すべてに対する協議を通じて、土地利用者の権利を承認し、また管理するための有効な枠組みを定めることを要求します。これまでの共同土地管理を失敗させてきた、汚職と恩顧主義を断ち切るにはこれが不可欠なのです。

 また諸政府及び地域的な国家間組織やFAOまたその他の国際機関が、2006年に農地改革・農村開発に関する国際会議(ICARRD)において定められた約束を早急に履行することを求めます。特に土地利用者の権利の保障、公平な自然資源へのアクセス及び全てのもの福利のための農村開発に依拠する農地改革プロセスの再活性化を求めます。
 FAOにおける土地と自然資源のガバナンスに関するガイドライン策定プロセスの強化、またそれが様々な国際法や国際憲章に定められている基本的人権に基づくことを要求します。こうした権利は、諸国家に対してその義務の履行を課すことができる、国内的・国際的に拘束力を持つ法的枠組みがあってこそ有効に守られるのです。その上に、それぞれの国家は、政策や企業活動が投資対象国に対して引き起こす影響に対して責任を有しています。また、私たちは、自然資源や農業生産物への投機を引き起こしている、国際的な貿易や金融に関する法的制度よりも、基本的人権が優越するものであることを改めて確認します。


 私たちは世界食料安全保障委員会(CFS)に対して、世界銀行が進めている「責任ある農業投資原則(RAI)」を明確に拒否することを強く求めます。このRAIは、起きている現状に対処するためには、不十分であり、非論理的なものなのです。更にICARRDにおける約束とIAASTDの地球行動枠組みの結論を取り入れることを求めます。
  
  諸国家、域内組織、また国際機関が人々の土地への権利を保障し、家族農業とアグロ・エコロジカルな食料生産を支援するように要求します。適切な農業政策は、先住民族や牧畜民、在来漁民、農地改革で受益した小農民など、全ての様々な生産者に対して特別な配慮をしなければなりません。また特に女性や若者の必要に応えていかなければなりません。

 最後に、世界中の様々な土地の市民や市民社会組織に対して、人やメディアや法律、資金、またポピュラーな、全ての可能な手段を用いて、土地収奪に対して闘っている人々を支援することを、また人々の権利を守るために、政府や国際機関に対して、その義務を履行するように圧力をかけることを呼びかけます。

 私たち皆が抵抗する義務を持ち、また尊厳のために闘っている人々を支援しましょう。

(2011.3.2)

訳:青西

Dakar Appeal against the land grab

http://viacampesina.org/en/index.php?option=com_content&view=article&id=1040:dakar-appeal-against-the-land-grab&catid=23:agrarian-reform&Itemid=36

 

Llamamiento de Dakar contra el Acaparamiento de Tierras

http://viacampesina.org/sp/index.php?option=com_content&view=article&id=1149:llamamiento-de-dakar-contra-el-acaparamiento-de-tierras&catid=23:reforma-agraria&Itemid=36

自発的ガイドラインの限界

 日本政府は海外農業投資が、「被投資国における農業の持続可能性を確保しつつ、投資側・被投資側の双方が裨益する形で実施することが重要である」として、6つの行動原則を定めている。
 しかしこれまで見るところ、こうした自発的なガイドラインの制定は、投資受け入れ側の地域社会の持続性や人権の保障、食料安全保障の確保には全く役立っていない。

 一つにはこのような行動原則を定めたところで、誰がどのように整合性を確認するのか、という仕組みが欠如している点にある。
1)多くの国で事前協議を行う制度的枠組みが欠如している。民間投資に対しても確実に実施しうるような事前協議制度が存在していなければ、投資プロジェクトに先だって行動指針が定めたような配慮が行われうるのかどうか把握することはできない。
2)事前協議を含め、行動原則に含まれるような配慮や対策が、プロジェクト開始前に行われたかどうかを把握することができない。情報が公開されていない以上、行動原則との整合性を確認することは当事者である企業にしかできない。
3)投資プロセス、事業実施プロセスにおいて発生した問題を把握することができない。
4)現時点において、日本政府の関係省庁において、行動原則にそって現地の状況を調査し、整合性を把握する仕組みは存在しない。
5)市民社会には情報が適切に提供されておらず、行動原則との整合性を第三者が確認できる仕組みがない。

 つまり、現時点において誰も「行動原則との整合性」を確認する仕組みを有さないということである。最低限の取り組みとして市民社会から日本企業の投資行動をチェックしていくことが必要とされている。

 次に仮に行動原則と整合しないケースが確認された場合に何をするのか?これも全く定められていない。誰が、どのような権限を有して、どのような対策を取りうるのか?
 
 こうしたことが全く定められていないままに、行動原則だけが定められ、さらにはいまだ日本政府は国際機関と連携して類似の行動原則を世界中に広げようとしている。

 しかし日本のケースで明らかになっているのは、このような自発的な原則を定めても、全く機能しないだけであり、単なる投資の正当化でしかないという現実である。
 
 地域住民の生活を脅かし、食料主権を侵害するような海外での農地取得を停止し、法的な拘束力のある国際法的な枠組みを適用していくことが必要であろう。

開発と権利のための行動センター
青西

食料安全保障のための海外投資促進に関する指針 より一部抜粋
http://www.mofa.go.jp/ICSFiles/afieldfile/2009/08/20/G0858_J.pdf

4 我が国の行動原則及びこれに関する国際的取組等
(1)行動原則
海外農業投資は、被投資国における農業の持続可能性を確保しつつ、投資側・被投資側の双方が裨益する形で実施することが重要である。この観点から、政府及び関係機関は、本指針に基づいて海外農業投資の促進策を講ずるに当たり、以下の行動原則との整合性を確認する。同時に、被投資国側にも投資環境の整備(収用の原則禁止や輸出規制の抑制等)や投資関連情報の提供などを求めていく。
① 被投資国の農業の持続可能性の確保
(例:投資側は、被投資国において、持続可能な農業生産を行う。)
② 透明性の確保
(例:投資側は、投資内容について、契約締結時等において、プレスリリース等により、開示する。)
③ 被投資国における法令の遵守
(例:投資側は、土地取引、契約等被投資国における投資活動において、被投資国の法令を遵守する。)
④ 被投資国の農業者や地域住民への適正な配慮
(例:(イ)投資側は、投資対象の農地の農民及び所有者に対し、その農地の取得及びリースに関し、適切な対価を提供する。(ロ)投資側は、現地における雇用について、適切な労働条件の下、農民等従業員の雇用を行う。)
⑤ 被投資国の環境への適切な配慮
(例:投資側は、投資に当たって、土壌荒廃、水源の枯渇等、被投資国の環境に著しい悪影響を与えてはならない。)
⑥ 被投資国における食料事情への配慮
(例:(イ)投資側は、被投資国における食料事情に悪影響を与えないように配慮する。(ロ)投資側は、被投資国の主食作物を栽培している農地を他の作物に転換することにより主食作物の生産量を著しく減少させるような投資は行ってはならない。)

アルゼンチン:ニデラ社に関して関係省庁へ質問書送付

農林水産省、外務省に下記の質問書を送付しました。

下記の記事に関連する質問書です。

http://landgrab-japan.blogspot.com/2011/02/blog-post_12.html

                                2011年3月3日
外務大臣    前原誠司殿
農林水産大臣  鹿野道彦殿

外務省   経済安全保障課
農林水産省 食料安全保障課
農林水産省 国際協力課
                                    質問書

 2011年1月24日、2010年11月24日付で送付させていただきました質問書に対して、電話及び文書にて回答を頂きました。当方からの質問書に対応していただきましたことお礼申し上げます。

 その後、アルゼンチンにおけるニデラ社の農園における農園労働者の搾取、労働関係法及び徴税関連法への違反が、アルゼンチン政府当局によって摘発されたとの記事を目にしております。
 このアルゼンチンのニデラ社は昨年11月に日本の豊田通商と包括提携を結んでおります。つきましては、日本政府が定めました「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」に基づき、この事例に対して、特に「指針」の③と④に関連して、日本政府がどのような情報を収集され、どのように対処されたのか、あるいは対処される予定であるのかを公表いただきたく、お願い申し上げます。

 また現地ニデラ社側が否定をしている一方で、アルゼンチン政府の関係当局が摘発を行っている中で、日本政府として、どのような手段によって、事実確認を行われるのか、方法論についても回答頂きたく思います。前回の質問書の回答によると「当事者である株式会社等からヒアリングを行い」ということが書かれておりましたが、今回のような事例においては「当事者」からのヒアリングだけでは不十分かと思われます。このような際に、今後どのような形で対応をされていくのでしょうか。

 前回の質問書にも記させていただきましたが、日本国政府はこの「指針」以外にも、世界銀行などとともに「責任ある農業投資のための行動原則」の策定にも取り組んでいます。この中でも「指針」と同様に、土地と資源に対する権利の尊重、食料安全保障、透明性の確保や、協議と参加、社会的持続性、環境持続性などが取り上げられています。
 このような「指針」や「行動原則」が実効性を持つためには、企業との情報共有を進めるだけではなく、市民社会に幅広く情報が共有されることが不可欠だと考えます。「指針」等を定めるのであれば、輸入食料を利用している日本国民に対して、幅広く情報を提供するための仕組みが構築されることが前提となるべきであろうと考えます。

A:「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」より一部抜粋

③ 被投資国における法令の遵守
(例:投資側は、土地取引、契約等被投資国における投資活動において、被投資国の法令を遵守する。)
④ 被投資国の農業者や地域住民への適正な配慮
(例:(イ)投資側は、投資対象の農地の農民及び所有者に対し、その農地の取得及びリースに関し、適切な対価を提供する。(ロ)投資側は、現地における雇用について、適切な労働条件の下、農民等従業員の雇用を行う。)

質問書pdfはこちら

http://cade.cocolog-nifty.com/file/20110303MAFF.pdf

日本企業のバイオ燃料生産に抗議の声-サン・マリアノ町の農民および先住民族 大規模な土地収奪に強く反対

FoEJapanのサイトに掲載されている情報の転載です。次のサイトよりアクセスできます。

http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/activity.html

 

フィリピン農民運動(KMP)
イサベラ州農民組織(DAGAMI)
フィリピン農村伝道組織(RMP)


プレスリリース
2011 年2 月23 日
サン・マリアノ町の農民および先住民族
大規模な土地収奪に強く反対

 2011 年2 月20~23 日の4 日間にわたり、イサベラ州農民組織(DAGAMI)およびフィリピン農民運動(KMP)は、フィリピン農村伝道組織(RMP)の協力の下、マニラからの現地調査団の派遣を行なった。イサベラ州サン・マリアノ町の13 の村から、少なくとも400 人の農民および先住民族が、(同町の)デル・ピラー村で行なわれた活動に参加した。派遣調査は、特に、バイオエタノール事業の実施地域に含まれているコミュニティーの農民の現状と要求を知ること、また、様々なセクターからの支援(があること)を(地元の農民に)示すことを目的として行なわれた。

 日本の大企業2 社、すなわち、伊藤忠および日揮が、台湾企業GCO およびフィリピン企業とパートナーを組み、先ごろ設立した合弁会社Green Future Innovations, INC.(GFII)は、サトウキビを原料としたエタノールの生産・売却を行なうことになっている。サトウキビの苗木場やプランテーションを準備するため、GFII とパートナーを組む会社Ecofuel Land Development, Inc.(ELDI)も別途設立された。サン・マリアノ町長エドガー・ゴー氏によれば、バイオエタノール精製工場は2012 年3月までに操業を開始するということだ。

 今回の現地調査により、バイオエタノール事業のためのサトウキビ・プランテーションの対象にもなっている地域で、現在、大規模な土地収奪が広く見られることがわかった。農民および先住民族の聞き取りや情報共有に基づけば、変則的な土地権利書の発行や、農民の土地に対するフィリピン・ランドバンク(LBP)による「抵当物受け戻し権喪失手続」、また、(包括的農地改革プログラムに基づく)「土地所有裁定証書(CLOA)」の取り消しなど、近年、様々な形態(の土地収奪)が、より積極的かつ広範囲で行なわれている。また、米、コーン、野菜、果樹等からサトウキビへの作物転換のケースも起きている。現地調査ではまた、特に、(バイオエタノール)事業への反対が強くなってきている地域において、軍隊の駐留が増えていることも認められた。


 KMP 事務局長ダニロ・ラモスは、「農民および先住民族が何十年にもわたり、彼らの土地を耕してきたことを調査団は確認した。しかし、ある個々人らが最近になって現れ、彼らの土地の所有権を主張している。パンニナン村では、農民に分配されたCLOA に対し、LBP による『抵当物受け戻し権喪失手続』が今にも開始されようとしているケースが、60 件近くある。(サトウキビ・プランテーションの)農業労働者らは、食費手当て等もなく、一日12 ペソ(訳者注:約24 円)から57 ペソ(訳者注:約114 円)くらいの賃金しか受け取っておらず、さらに悪いことには、何週間も賃金の支払いが遅れていることを彼ら自身の口から明らかにした。」と述べた。


 DAGAMI サン・マリアノ町支部の代表ジョニー・ヤダオによれば、こうした問題に意見を述べてきたDAGAMI のメンバーらはまた、Pantawid Pamilyang Pilipino Program (4Ps)(訳者注:フィリピン社会福祉開発省による貧困削減プログラム)の下で行なわれている「条件付の補助金譲渡(CCT)」の受領予定者リストから名前を削除すると脅されている、ということだ。

地元の自治体によれば、サトウキビ・プランテーションとして使われるのは、食料用の作物が植えられていない未利用地のみということだ。しかし、調査団の現地訪問、また、地元住民の証言から、(サトウキビ・プランテーションになる)これらの土地が耕作地であり、以前、米やコーン、バナナといった作物が植えられていたところであることが明らかになった。
農民および先住民族はまた、バイオエタノール事業の事業者らが申し出たバラ色の約束の一つが、原料であるサトウキビ生産のために土地を使わせてくれるならば、年20,000 ペソ(訳者注:約40,000 円)の土地賃貸料金を受け取れるというものだったことを明らかにした。しかし、実際には、その賃貸料金は現在、年にわずか5,000 ペソ(訳者注:約10,000 円)にまで引き下げられており、彼ら家族の基本的なニーズを満たすには十分でない。このように、彼らの経済的な困窮は食い物にされている。


こうした状況は、イサベラ州サン・マリアノ町の農民および先住民族の困窮を悪化させている。したがって、影響を受ける/受けている農民および先住民族の要求、また、現地調査団の提言を以下に示す。


. 何十年にもわたり耕作してきた土地の所有権を認めること
. 農民および先住民族が収奪されてしまった土地について、彼らが所有し、平穏な耕作ができる状態に戻すこと
. 農業改革省(DAR)、環境天然資源省(DENR)、土地登記局、LBP が、農民および先住民族の移転につながる変則的な土地権利書の発行に関与していることが報告されているケースについて、調査を実施すること
. 「抵当物受け戻し権喪失手続」を中止すること。また、変則的な土地権利書の発行を進めている首謀者や関与している者の調査をし、起訴すること
. 詐欺行為などを通じて取得された土地権利書を取り消し、早急に(土地の)復権手続きを行なうこと
. 農民や先住民族による農業の生産性を確保するため、フィリピン政府機関および地方自治体が農業支援/補助を十分に供与すること
. 伝統的な品種を利用した固有かつ持続可能な営農活動の発展と促進を支援すること

. (サトウキビ・プランテーションにおける)農業労働者を含む農業労働者の生活給が供与されるよう、(州や町の自治体が)条例を作ること
. (バイオエタノール)事業によって影響を受けるコミュニティーにおいて、公聴会/住民協議の実施、また、情報公開を確保すること


(以上)
翻訳:波多江/FoE Japan

英文はこちらのサイトにあります。

http://kilusangmagbubukid.digitalresourcesbureau.org/files/FFM_Mission_Statement_0.pdf

 

またDAGAMIの要請書は次のように訴えている。(次のサイトより抜粋)http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/pdf/2010petition.pdf

「しかし、エタノール事業がもたらすのは発展ではない、と私たち農民は信じる。むしろ、私たちの土地を奪い、私たち農民の貧困と飢えを悪化させるだけである。」

「情報によれば、未利用地のみがサトウキビ農園になるという。しかし、実際に起きていることは違っている。伝統的な農法を営んできた農地(Kaingin)やこれまで使ってきた田んぼが、エタノール(事業の)契約に入っている。実際は、「未利用の」土地といっても、土地権利書を持っていない、あるいは、農業のための元金が不足しており借金をするしかない、あるいは、政府からの支援が不足しているといった理由で、誤って未利用とみなされている。こうした土地は他にもある。家畜のための牧草地や、家屋を作るために利用する原材料、集水域等である。」

「 リース契約(土地を利用させる契約)にある9 つの条項の大半は、私たち農民には重く、また、不利なものだ。」

「市民の食料の代わりに、エタノール製造のため、広大な土地の利用転換がなされれば、食料不足や日用品の価格高騰の経験を悪化させるだろう。現在、サン・マリアノ町の農家75~80%が一日三食できない状態にあり、国内外の企業が巨大なサトウキビ事業を進める間、農民は飢えで死んでしまうだろう。市民に必要なのは、食料であり、エタノールではない。」
「サトウキビ、コーン、キャッサバ、ヤトロファというローカル作物からのバイオ燃料/エタノールの精製は、科学技術の進歩の一部で、日本等の先進国のみが利益を得る。そうした国の望みは、彼らの産業のために安い原料を作り、供給し、彼らの高い生成物を売る市場として、私たちを縛り付けて維持することだ。したがって、発展の代わりに、「エタノール事業」の実施は、サン・マリアノ町の農民と市民にとって、広大な土地の収奪を意味する。ここで確実に利益を得るのは、GFII、Echofuel Land Development 社、そして、サン・マリアノ町の有力者である。

「イサベラ州農民組織サン・マリアノ町支部(DAGAMI-San Mariano)のリーダーシップにより、私たち農民は、サン・マリアノ町の農民の民主主義という大志と利益を代表して、反農民かつ反市民のエタノール事業に対する反対の意を表明する。私たちのこの表明の証拠が、以下の仲間の署名である。ここに署名した仲間は、農民の合法的、かつ、公正な要請のために一致団結した市民である。」

2011年3月6日日曜日

カンボジア土地問題>政府森林局が経済土地コンセッションによる森林の減少を警告

メコン・ウォッチの承認を受け、下記サイトより転載させて頂いた記事です。 http://www.mekongwatch.org/resource/news/20110301_01.html

メコン川開発メールニュース2011年3月1日

カンボジア政府は1990年代初頭より、「経済土地コンセッション」(Economic LandConcession)という手続きを通して、内外の民間企業に土地の使用を最長99年間認めることで、大規模プランテーションや農園への民間投資を奨励してきました。しかし、コンセッションの対象となった土地では、住民たちが強制的に立退かされたり、農地や放牧地への立ち入りを制限されたりと、さまざまな被害が発生しています。国連人権高等弁務官事務所(UNOHCHR)カンボジア人権事務総長特別代表が2007年6月に発表した報告書(Economic Land Conce ssions in Cambodia, A Human Rights Perspective)も冒頭で、農村部の59件、94万3,069ヘクタールに及ぶコンセッションのうち、36件が外国企業や政治・経済的に力を持つ人びとに有利なように承認されたと述べています。
http://cambodia.ohchr.org/WebDOCs/DocReports/2-Thematic-Reports/Thematic_CMB12062007E.pdf

こうした事態を憂慮するカンボジアのNGOグループは、政府に対して、すでに実施されているコンセッションを見直し、あらたなコンセッションを一時停止するよう要請し、また政府に多額の援助を提供する工業先進国政府に対しても、たびたびコンセッションによる被害の深刻さを訴えてきました。

関連ニュース「NGOが支援国政府に対して経済土地コンセッションによる被害を強調」(2010年6月24日)

しかし、残念ながら事態は好転していません。今年1月にカンボジア政府森林局が発表した報告書によると、コンセッションは130万ヘクタール(カンボジア国土の7%)に拡大し、コンセッションが原因となって、カンボジアの森林も急速に減少しつつあります。

以下では、この件を報じた現地紙『プノンペンポスト』(原文英語)の記事を日本語訳で紹介します。

脅かされる森林

Vong Sokheng/James O'Toole
『プノンペンポスト』
2011年1月17日(月)

カンボジア政府森林局は、政府が経済土地コンセッション(ELC)による国土の譲渡を続けるならば、全国の森林面積を60%とする目標を達成できないと警告を発した【訳注1】。

森林局が先週公表し、本紙が本日入手した2010年年次報告書によると、これまでに130万ヘクタール以上に相当するコンセッションが承認された。

この数字は現在のカンボジアの領土のほぼ7%に当たり、コンポンスプーとカンポットの二州を合わせた面積よりも大きい。

森林局は衛星写真で得られたデータを引用しつつ、カンボジアの現在の森林面積は国土の56.94%で、2006年の時点から2.15%減少していると述べた。

森林局はまた、「この結果を見て、森林局と農林水産省はともに、政府がミレニアム開発目標(MDG)で設定している森林面積60%を達成できないと懸念している。原因はコンセッションによる(森林の)減少傾向である」と述べ、さらに多くのコンセッションが検討の過程にあると指摘した。

「コンセッションの対象となった土地を調査する必要があり、契約にそって使っていない土地は保存目的で没収すべきである」。

人権団体は、コンセッションが認められた多くの土地で森林が伐採され、明確な利用目的もなく放置されると批判している。

昨年(2010年)5月、カンボジア人権行動委員会(CHRAC)は声明を発し、政府に対して適切な監視体制が整うまでコンセッションを停止するよう要請した。

新しい統計では、2006年以降にコンセッションが認められた土地は約30万ヘクタールに達する。

コンサベーション・インターナショナルのデビッド・エメット(David Emmett)地域ディレクターは、コンセッションをめぐる法制度を強化し、カンボジアが森林面積を維持し、保全事業の恩恵を受けられるようにすべきだと語った【訳注2】。

そうした保全事業の中でもっとも知られているのは国連(UN)の「森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減」(REDD)【訳注3】で、特定の国が他の国の森林保全事業に対して資金を提供することで、自国の炭素排出量の(削減)の肩代わりとすることができる。

「カンボジアへの投資を望む援助国や政府はたくさんあるが、例えばREDDに申請したモデル地域の一部が突然1万ヘクタールの新規コンセッションの対象になったりはしないかと確信が得られないのだ」とエメット氏は述べた。

また、エメット氏は、森林局があげた森林面積56.94%という数字に対しては、「ほぼ正確だろう」とし、カンボジアの森林減少は東南アジアの他国と比べればそれほど急速ではないと付け加えた。

しかし、劣化したり、部分的に伐採された土地が森林として計算されていることもあるとした。

エメット氏は、「この数字が森林の量や質を完全に捉えているとは限らない」と述べた。

「ある土地を依然として森林だと言いながら、実際には森林の30%が伐採されていることもある」。

森林局の報告書では、職員が、森林に関わる犯罪の撲滅に神経を注ぎ積極的に活動したにもかかわらず、昨年、少なくとも7,977ヘクタールの森林が違法に伐採されたとしている。

昨年、フンセン首相は違法伐採に対する取締まりを宣言し、4月には、違法伐採の撲滅に失敗したとの理由で前森林局局長のティ・ソクン(Ty Sokun)氏を更迭した。森林局の報告書によると、昨年1年で約1万立方メートルの木材が違法伐採であるとして没収され、同容疑で82人のカンボジア人が起訴されている。

しかし、人権党のイェム・ポンハリット(Yem Ponharith)報道官は、政府高官が違法伐採や密輸に関与した場合、めったに起訴されることもなく、利益を得つづけると述べた。

同報道官は、「違法伐採に関わる者たちへの手入れは何度も行われているが、政府関係者に賄賂を支払って、高価な木材の密輸を続けているのである」と語った。

また、同報道官は、森林保護とコンセッション削減を呼びかける人権党の声はことごとく無視されていると付け加えた。

昨年5月、REDD事業への利用に可能な地域保全と森林増加を目的に、隣国のインドネシアが森林地帯におけるコンセッションの停止を宣言した【訳注4】。
ただし、実施はつい先ごろまで持ち越された。

チャン・サルン(Chan Sarun)農林水産大臣にコメントを求めようとしたが本日は不在で、チェン・キム・スン(Chheng Kim Sun)森林局局長はコメントに応じなかった。

訳注
【1】コンセッション(経済的土地営業権)については、『カンボジア王国の投資に関する法律・政令』(カンボジア開発評議会他、2008年)、「第二部:投資関連法・政令の一部(コンセッション関係)」を参照。
http://www.asean.or.jp/ja/asean/know/country/cambodia/invest

【2】コンサベーション・インターナショナルは、1987年設立の米国の環境保全団体。今年2月、カンボジア全土を含むアジア南部地域を「世界で最も危機に直面した森林地帯10ヶ所」の一つとして発表した。
http://www.conservation.org/explore/priority_areas/hotspots/asia-pacific/Indo-Burma/Pages/default.aspx

【3】REDDとは、開発途上国における森林の破壊や劣化を回避することによる温室効果ガスの排出を削減に対して、経済的なインセンティブを付与するための国際的なスキームであり、現在、国連気候変動枠組条約等において議論が進められている。
http://www.foejapan.org/forest/sink/redd_01.html

【4】2010年5月26日、インドネシアおよびノルウェーは、REDD+に関するパートナーシップ合意を締結したが、この中に、インドネシアは、天然林や泥炭地のプランテーション開発に対する新規コンセッション承認を2年間にわたって凍結するというモラトリアム条項が盛り込まれ、注目を集めた。

(文責・翻訳 土井利幸/メコン・ウォッチ)

フィリピンにおけるバイオ燃料生産が地域の食糧生産を脅かす

 FOEのメールマガジン【Vol.241】(2011.3.1)が、伊藤忠と日揮が中心となって、フィリピンのイサベラ州でおこなっているバイオ燃料生産の問題を取り上げている。[1]
  この報告によると、事業者側は「多くの未利用地がある」という理由でこの土地にエタノールの原料となるサトウキビの作付けを拡大する計画であるという。
 しかしながらこれに対して、地域の農民や先住民族が土地を奪われると反対の声を上げ始めているとのことである。
 既にこれまで耕作してきた土地が地元有力者の名義でバイオ・エタノール事業者に貸し付けられてしまったケース、合意なしに農地の調査が強制的に行われたケースが出ているという。

 この事業については既に11月24日付けで農林水産大臣及び外務大臣宛に質問状を送付しているが、農林水産省は1月24日付で次のように回答している。
「(食料安全保障のための海外投資促進に関する指針)は、食料安全保障を確保する観点から、海外における食料生産のための投資を対象とするものです。なお農林水産省としては、本件のようなバイオエタノールのための投資についても、食料安全保障に影響が生じることがないかどうか情報収集を行っていきたいと考えます」[2]

 3月5日の時点で、このバイオエタノール生産事業の現地住民への影響について、農林水産省、外務省、伊藤忠、日揮のサイトにおいて、どのように現地の状況が把握されているか言及はされていない。
 
 つまりこのような法的拘束力をもたないガイドラインでは、現地の問題について適切に情報収集を行い対処することができないのである。
 今後、再度、質問書を送付するとともに、地域住民の土地への権利を守るために適切な対応を取ることを求めていく必要があると考える。

 開発と権利のための行動センター
 青西


[1] 国際環境NGO FoE Japan ニュースマガジン【Vol.241】2011.3.1
 http://archive.mag2.com/0000049531/20110301205028000.html
[2]  海外農業投資指針の運用について
http://landgrab-japan.blogspot.com/2011/01/blog-post_8590.html
質問書への回答
http://landgrab-japan.blogspot.com/2011/01/blog-post_26.html

2011年3月4日金曜日

バイオ燃料とランドラッシュ(資料紹介)

 

NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク が発行したバイオマス白書2011において「バイオ燃料とランドラッシュ」というテーマが取り上げられています。

コラムでは「土地収奪に直面するコミュニティ」としてカンボジアの事例が紹介されています。

バイオマス白書2011 ウェブサイト版 © NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 2011年2月作成 http://www.npobin.net/hakusho/2011/ 

内容はリンクより確認ください。

トピックスⅠ 国産材利用拡大と木質バイオマス利用

1. 再生可能エネルギー電力全量固定価格買取制度(FIT)

2. バイオマスの熱利用

コラム1◆バイオマスボイラーの導入事例

3. 国産材の需要と供給を結ぶには

トピックスⅡ バイオ燃料とランドラッシュ

1. エネルギー供給構造高度化法とバイオ燃料の持続可能性基準の施行

2. 開発輸入の問題

3. ランドラッシュへの懸念

コラム2◆バイオ燃料をめぐる国際動向:2010年

コラム3◆土地収奪に直面するコミュニティ

2010年の動向

1. 国際的動向

2. 国内の動向

コラム4◆総務省緑の分権改革および東京都の総量削減義務と排出量取引制度

3. マテリアル利用の動向

アフリカでの土地取得は貧しい人々にとってリスクとなる(2009)

FAO日本事務所 プレスリリース 2009年5月25日

アフリカ日本協議会より提供の情報

http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/africa-now/no86/top7.html

FAO日本事務所 プレスリリース 2009年5月25日
アフリカでの土地取得は貧しい人々にとってリスクとなる
初の詳細な調査が農村社会への影響を警告するが利益をもたらす可能性もあると指摘

2009年5月25日:ローマ 初の詳細な動向調査によれば、大規模な土地取得がアフリカなどの大陸で増加しており、もし適切に行わなければ、貧しい人々が立ち退きを強いられたり、土地、水などの資源へのアクセスを失ったりするリスクが高まっている。
 この調査報告書は、国連農業機関(FAO)と国際農業開発基金(IFAD)の依頼で国際環境開発研究所(IIED)が実施した。調査報告書は、土地取得取引は多くのチャンス(保証された販路、雇用、インフラへの投資、農業生産性の増加)をもたらす可能性があるが、同時に、もし現地の人々が土地配分の意思決定過程から除外され、彼らの土地への権利が保護されない場合には、甚大な被害の原因ともなりうると警告する。
 同報告書はこれまで土地争奪と定義づけられてきた事象について見られるいくつもの誤った概念を強調して報告している。調査により、土地に対する投資は過去5年間増加していることがわかった。しかし海外からの投資が圧倒的である一方、国内投資家もまた土地買収に大きな役割を果たしている。
 民間取引のほうが政府間取引より一般的だが、各国政府も様々な手段を用いて民間取引を間接的に支援している。
 食料とエネルギーの安全保障の懸念が鍵となる推進力だが、ビジネスチャンス、工業用農産物需要、受入国の政府機関などその他の要素も関与している。実際にはどの国でも、大規模な土地獲得は農地のわずかな一部にとどまっているのだが、広範に広がっている見方とは逆に、農耕適地のほとんどは地元の人々に既に利用されていたり、利用権が主張されており、非常に小規模な「空いた」土地しか残っていない。
 報告書により、多くの国で地元の権利を保護し、地元の利益、生活と福祉を考慮する充分なメカニズムがないことがわかった。契約交渉における透明性の欠如、チェックと均衡性の欠如が、公共の利益を最大限としない取引を促進してしまう可能性がある。不安定な現地の土地の権利、登録手続きへのアクセスの欠如、生産的利用条件のあいまいな定義、立法上の欠落やその他の要因があまりに頻繁に現地の人々の立場を損なう。
 既存の土地の利用と権利を含む現地の状況を慎重に評価し、農村社会のために土地の権利を保障し、現地の人々を交渉に関与させ、自由で事前に十分説明された上での現地の人々の同意が得られた後でのみ、土地獲得を可能とする必要がある。

複雑な状況

 共著者であるIIED ソニア・ヴァーミューレンとロレンツォ・コトゥーラは、土地獲得と一言で言ってもその実情は非常に多様で土地争奪に関する包括的な声明は非常に誤解を与えやすいと注意をうながす。
 「結局、国際的な土地取引が機会をとらえリスクを緩和するかどうかは、どのようなビジネスモデルが使われるか、コストと利益がどのように分配されるか、誰がどのようにこれらの要件を決定するかなどの取引条件による」とコトゥーラは述べる。「適切な規制、熟練した交渉および公的な監視が必要だ」。
 「多くの国では、意思決定過程に地元の人を関与させる条項は欠如しているか十分に実行されておらず、これが土地やその他の資源へのアクセスを失うリスクの増加につながる」とヴァーミューレンは付け加えた。
 「土地獲得の規模が誇張されているが、多くの国では外国に土地を与える協定は非常に多くの問題を抱えうる」と彼女は加える。
 アレクサンダー・ミューラーFAO 天然資源管理・環境局長は、海外投資と大規模土地獲得を地球規模の食料安全保障の課題という文脈の中に位置づける必要性を強調する。
 「この新しい傾向は最近の食料危機と食料価格の不安定性のひとつの結果である。世界の食料不安と世界的な投資の新たな課題には、適切な規制と広い見識を持った農業食料政策を通じて対応しなければならない。今回の調査は、社会、環境面を含めすべての意味合いについての認識と投資決定をつなぐことの手助けとなるはずだ。土地統治のためのガイドラインの作成又は国際投資を規制する一種の行動規範が状況改善のためには有用かもしれない。FAO はパートナーたちと一緒に現在関連ガイドラインの作成に取り掛かっており、今回の調査はその過程の第一歩である」。
 「私は『土地争奪』という包括的な表現を使うのは避けたい」とIFAD 技術アドバイス部長ロドニー・クックは述べる。「正しく行うことができれば、これらの取引は関係者すべてに利益をもたらすことができるし、開発の手段ともなりうる。」
 「IFAD が毎日共に活動している貧しい女性・男性が二の次になってはならない」とクックは付け加えて述べる。「彼らの意見と利益が中心とならなければならない、そして我々は雇用、インフラ、農業技術など約束されるすべての利益が実現することを確保しなければならない」。

新たな研究

 調査報告書、「土地争奪なのか開発の機会なのか? アフリカにおける農業投資と国際土地取引」には、エチオピア、ガーナ、ケニア、マダガスカル、モザンビーク、スーダン、タンザニア、ザンビアからの新しい研究が含まれる。
 本調査は、FAO とIFAD からの協力と密接な連携の下にIIED チームにより行われた。FAO, IFAD,IIED および英国国際開発省により資金提供された。

出典 http://www.fao.or.jp/news01.html
英文URL
http://www.fao.org/news/story/en/item/19974/icode/

アフリカでも進行する国際的な農地取引 誰にとってのチャンスなのか(2009)

 

アフリカ日本協議会(AJF)発行の、会報「アフリカNOW」(季刊)に掲載された記事です。会報ではAJFの活動紹介にとどまらず、アフリカに関する最新情報を伝える、日本で出会えるアフリカを紹介する内容の記事を掲載しています。

2009年の第86号に掲載された記事からの転載です。http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/africa-now/2009.html

アフリカでも進行する国際的な農地取引-誰にとってのチャンスなのかInternational land deals in Africa Land grab or development opportunity?
『アフリカNOW』編集部/Editor of "Africa NOW"

政変の背景に大規模な農地取引

 今年初め、「首都で反大統領デモが暴徒化、少なくとも34人死亡 マダガスカル」(1)と報じられて以来、3月18日に「マダガスカル新大統領に野党指導者 21日就任」(2)という政権交代のニュースが伝わるまで、日本の新聞やウェブニュースにもマダガスカルの政変に関するニュースがたびたび登場した。その後3月21日には「韓国企業に農地の半分無料貸与 国民反発で大統領退陣 マダガスカル」(3)と報じられている。
 また5月には、国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国際環境開発研究所(IIED)から調査報告書"Land grab or development opportunity? Agricultural investment and international land deals in Africa"(4)(土地争奪なのか開発の機会なのか? アフリカにおける農業投資と国際土地取引)が発行され、アフリカにおける大規模な農地取引(この報告書の定義では1,000ha以上の農地取引)の一端が明らかにされた。この報告書では、土地市場が発達しておらず、土地が基本的に国有あるいは共同体所有とされているアフリカにおける土地取引には、世界的に進行している国際土地取引の中でも際立った特徴があると指摘されている。

アフリカにおける土地取引の特徴

 この報告書の出版を伝える5月25日付のFAO日本事務所のプレスリリース(14?15ページに全文を掲載)は、アフリカにおける国際土地取引の特徴を以下のようにまとめている。

・調査により、土地に対する投資は過去5年間増加していることがわかった。しかし海外からの投資が圧倒的である一方、国内投資家もまた土地買収に大きな役割を果たしている。
・民間取引のほうが政府間取引より一般的だが、各国政府も様々な手段を用いて民間取引を間接的に支援している。
・食料とエネルギーの安全保障の懸念が鍵となる推進力だが、ビジネスチャンス、工業用農産物需要、受入国の政府機関などその他の要素も関与している。実際にはどの国でも、大規模な土地獲得は農地のわずかな一部にとどまっているのだが、広範に広がっている見方とは逆に、農耕適地のほとんどは地元の人々に既に利用されていたり、利用権が主張されており、非常に小規模な「空いた」土地しか残っていない。
・報告書により、多くの国で地元の権利を保護し、地元の利益、生活と福祉を考慮する充分なメカニズムがないことがわかった。契約交渉における透明性の欠如、チェックと均衡性の欠如が、公共の利益を最大限としない取引を促進してしまう可能性がある。不安定な現地の土地の権利、登録手続きへのアクセスの欠如、生産的利用条件のあいまいな定義、立法上の欠落やその他の要因があまりに頻繁に現地の人々の立場を損なう。
・既存の土地の利用と権利を含む現地の状況を慎重に評価し、農村社会のために土地の権利を保障し、現地の人々を交渉に関与させ、自由で事前に十分説明された上での現地の人々の同意が得られた後でのみ、土地獲得を可能とする必要がある。

見えない土地取引の実態

 この報告書は、「大量のメディアレポートそしてごく限られた先行的調査(特にGRAINのレポート"SEIZED! The 2008 land grab for food and finacial security”(5))があるとはいえ、国際土地取引とその影響についてはほとんどわかっていない。この報告書はこのギャップを埋めるための一歩である」と述べている。その一方で、「アフリカにおける土地の取得に関する1次・2次データはとても少なく、信頼性も低い」ことを指摘し、土地取引の実態を明らかにする作業は今後の重要な課題と述べている。
 マダガスカル出身者が運営するウェブサイト"Collectif pour la Defensse des Terres Malgaches"(6)(マダガスカルの土地を守るためのニュース集成)で前大統領と韓国企業の取引が明らかにされたことが、前大統領への怒りを引き起こしたと伝えられている。またウガンダでは2007年4月に、ビクトリア湖に浮かぶ島の数千ヘクタールの熱帯雨林をオイルパーム・プランテーションへ転用するという計画が明らかになり、首都カンパラで大規模な土地取引反対の行動が起きて計画が破棄される(7)など、土地取引の実態を明らかにする作業は、政変やさまざまな社会不安にもつながる可能性があり、困難が予想されている。

投資国の食料安全保障 vs
投資を受ける国の食料安全保障

 GRAINのレポートは、一昨年から昨年前半にかけて急激に進行した世界的な食料価格の高騰の中で「食料不安にかられた輸入頼みの政府たちが、自国民を食べさせるために自国自身の食料を国外生産で確保するよう外国の広大な農地を召し上げている。他方では、農業・加工・食品会社や金融危機の悪化の背景の中で、収益に飢えた民間の投資家たちが大型で新しい収入源を外国農地への投資の中に見出している」と概観し、食料を輸入に頼る国々、特に中東諸国、中国や韓国そしてリビアなどがアフリカ諸国で大規模な土地取引を行っていると指摘している。
 FAO・IFAD・IIEDの報告書では、スーダン、エチオピア、ガーナ、マリ、マダガスカル、モザンビーク、タンザニアの土地取引の現状が報告されている。この報告書によれば、スーダン政府は2000年に締結した取り決めによって、ゲジラ州の12,600haの土地を50年間のリースでシリア政府に提供している。スーダンとエチオピアでは、サウジアラビアの農業投資企業が計4億米ドルの農業投資をすることを発表した。この農業投資企業は、エジプトでも大麦や小麦、家畜生産を目的に10,000haの農地へ投資しており、2009年にはエチオピアで、規模は不明だが、農地を取得したと伝えられている。前述した、耕作可能な農地の約半分の農地を韓国企業に無償でリースしようとしたことが引き金になって政変が起きたマダガスカルでは、一方で、 452,500haの農地がバイオ燃料原料であるヤトロファを栽培する企業に50年のリースで提供されている。タンザニアでも英国の企業が、バイオ燃料原料としてスウィート・ソルガムを栽培するために45,000ha以上の農地のリース契約を取得している(pp.38)。
 こうした農業投資が、投資国の食料安全保障確保あるいは先進国向けのバイオ燃料生産のために行われている一方で、スーダン、エチオピアでは世界食糧計画(WFP)による食料援助が実施されている。南アフリカ共和国をのぞくアフリカ諸国のほとんどが主要な食料を輸入に頼る純食料輸入国で、投資国の食料安全保障のための農業投資がアフリカ諸国で広がっていることに対して警告が発せられている。

アフリカに未利用の農業適地はあるのか

 武田丈・亀井伸孝編『アクション別フィールドワーク入門』(8)に収録された西崎伸子さんのレポート「遠い世界に踏み出す」は、政府が生物保護のために「サンクチュアリ」とした土地に対して、周辺地域の人々が歴史的な土地利用を背景に利用する権利を主張していることを伝えている。また、松村圭一郎『所有と分配の人類学』(9)は、国土のすべてが国有地とされているエチオピア農村で、農民たちによる土地取引が行われていると述べている。国際土地取引の対象とされた農地に関して、FAO・IFAD・IIEDの報告書は、「農耕適地のほとんどは地元の人々に既に利用されていたり、利用権が主張されており、非常に小規模な『空いた』土地しか残っていない」ことを明記している。
 またこの報告書第3章のBox 3.1「強力な政策しかし政策通りに実施されない状況:モザンビークにおける土地取得に関する共同体への諮問の経験」、Box 3.2「明確な法律と機関しかし不適切な経験とガイダンス:タンザニアにおける土地取得に関する共同体への諮問と補償」では、土地を利用している農村共同体の権利を守るために設けられた法律や仕組みが十分に機能していないことが報告されている。
 実際に土地を利用し農業生産を行っている農民、農村共同体の権利が脅かされることは、食料生産への意欲を失わせ食料安全保障を脅かすことになる。適切な政策が実施されないならば、ウガンダやマダガスカルで起きた土地取引反対の大衆的な抗議行動や社会不安という結果につながることも予測されるだろう。

アフリカ諸国の農民たちの
意欲に応える農業支援を

 国家の土地政策、開発政策が、対象となった地域の人々の生活を脅かし、土地政策、開発政策への反対運動につながったケースは、先進国でも少なくない。現在、アフリカ諸国で進行している国際土地取引に関して、農地の無償リースをてこに開発資金を導入しインフラ整備や技術移転を促すといった、土地取引の対象となっている国の政府の考えや計画だけでなく、対象となった地域の人々、とりわけ農地を実際に利用し食料を生産している人々の気持ちや希望に注目する必要がある。
 FAO・IFAD・IIEDの報告書で指摘されている「多くの国で地元の権利を保護し、地元の利益、生活と福祉を考慮する十分なメカニズムがないことがわかった。契約交渉における透明性の欠如、チェックと均衡性の欠如が、公共の利益を最大限としない取引を促進してしまう可能性がある。不安定な現地の土地の権利、登録手続きへのアクセスの欠如、生産的利用条件のあいまいな定義、立法上の欠落やその他の要因が、あまりに頻繁に現地の人々の立場を損なう」という現状では、人々の希望は奪われていく。
 すでに砂漠化の進行により生産力を失った農地を離れ、国内の大都市へ、ヨーロッパ諸国へと続く人の波は無視できない規模になっている。国際土地取引をめぐる政策の失敗は、この人の波をさらに大きくする可能性があるだろう。マダガスカルで起きたような政変につながる動きになるかもしれない。GRAINなど農民支援の組織の伝える情報も参考にして、アフリカ諸国の農民たちの意欲に応える農業支援を追求していかなくてはならない。

(1) AFP BB News 2009年1月28日 13:40 発信地:アンタナナリボ/マダガスカル )
(2) MSN産経ニュース 2009年3月18日
(3) MSN産経ニュース 2009年3月21日
(4) ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/011/ak241e/ak241e.pdf
(5) http://www.grain.org/briefings_files/landgrab-2008-en.pdf
日本語訳「食料と金融危機最中の農地に卑劣な手口」http://www.arsvi.com/i/2-food_seized.htm
(6) http://terresmalgaches.info/
(7) http://www.arsvi.com/i/2agrofuel.htm#08
(8) 武田丈・亀井伸孝 編『アクション別フィールドワーク入門』世界思想社、2008年3月
(9) 松村圭一郎『所有と分配の人類学』世界思想社、2008年2月

食料と金融危機最中の農地に卑劣な手口(2008)

 

アフリカ日本協議会提供の情報です。再び食料価格が高騰する中、あらためて読み直しておく価値は大きい。

Grainが2008年10月に発行して、土地争奪問題への注意を喚起したアニュアル・レポート"SEIZED! The 2008 land grab for food and finacial security"の日本語訳。

長文となりますので、元のサイトへのリンクを貼っておきます。

食料と金融危機最中の農地に卑劣な手口
http://www.arsvi.com/i/2-food_seized.htm
原文"SEIZED! The 2008 land grab for food and finacial security" についてはhttp://www.grain.org/briefings/?id=212を参照のこと。

アフリカのアグロ燃料(2007)

 

アフリカ日本協議会より提供の情報です。

2007年7月に公表されたアフリカン・バイオダイバーシティー・ネットワーク(ABN)の報告書の日本語訳です。アグロ燃料に関連して引き起こされる土地問題が取り上げられています。

原文はこちら

Agrofuels in Africa – impacts on land, foods and forests | (1.9Mb) Case studies from Benin, Tanzania and Uganda by the ABN, Envirocare (Tanzania), Nature-Tropicale (Benin), Climate and Development Initiatives (Uganda). By Matongo Mundia and Clement Chipokolo (Zambia)

長文になりますのでリンクのみ掲載します。

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