2013年5月2日木曜日

モザンビーク北部のプロサバンナ事業は史上最悪

共同声明(PDF) 英文

マスタープラン案のリーク

秘密主義の計画が大規模土地収奪をもたらすと市民社会組織らが警告

2013年4月29日

市民社会組織は、リークされた最新バージョンのプロサバンナ事業のマスタープラン案(20133月版)をついに見ることができた。それにより、日本・ブラジル・モザンビーク政府が、モザンビーク北部で大規模な土地収奪を可能とする道を拓こうと秘密裡に企てていることが判明した。モザンビークのいくつかの団体とその国際パートナーは、考察とともにこのマスタープランを公にする。

プロサバンナは、モザンビーク北部の農業開発を支援する日本・ブラジル・モザンビークの三角協力事業である。市民社会にリークされたマスタープラン案によると、同事業はナンプーラ州、ニアサ州、ザンベジ州の3州19郡の1000万ヘクタール以上の面積をカバーするという。この地域には400万人以上が住み、農業を営んでおり、事業関係者にナカラ回廊地域と呼ばれてきた。

プロサバンナ事業立案から現在までのすべてのプロセスが、透明性、公な協議、参加を全く欠くものとして特徴づけられる。アグリビジネス企業が、ナカラ回廊でのビジネス機会を調査するために政府代表団に含まれている一方で、影響を受ける地域に住む400万の人々は、この事業やプランの狙いに関する情報を得ていない。三つの政府は、このマスタープラン案およびこれ以前のバージョンのプランを公にすることを拒否してきた。

このマスタープラン案は、多国籍アグリビジネス企業と関係の深い外国コンサルタントのチームによって作成されているが、この中にはプロサバンナ事業対象地域で既に土地を獲得している者も含まれる[1]。対象地域の住民との意味ある協議はなく、同プランは住民のニーズ、歴史、知識、将来への希望を考慮していない。また、地元の農業や食料システムを尊重しないものである。

プロサバンナは、開発援助事業として提示されてきたが、入手したマスタープラン案を見ると、モザンビークの農業を企業が乗っ取るビジネス計画であることが明らかである。

マスタープランは小規模農家にとって何を意味するか?

プロサバンナ計画の推進者は、同事業について小農を支援するプログラムだと言い続けてきた。しかし、マスタープラン案では、アグリビジネスを小農がどう支援するかしか考えられていないことが分かった。それは、主として次の二つの方法で実現されようとしている。

1. 伝統的移動輪作農法や土地管理の実践を潰し、農民を、商業作物、化学肥料・農薬の投入、私的土地占有権に基づく集約農業に追いやる。

マスタープラン案では、伝統的農業の有効性について何も分析していないにもかかわらず、「移動農法から定着農業(settled farming)への移行が緊急に必要」で、「マスタープランの鍵となる戦略」としている。さらに、「移動農法の実践の撲滅」アクションまでも求めている。

農民が伝統的な農業を捨てるのに抵抗することを念頭におき、いくつかの策が提案されている。集約農業の効果をみせるため「リーダー的農家」を育成し、「速効性の効果が見える化学肥料への補助金システム」を導入したり、もっとも注目すべき点としては、このような転換を行う農家に土地占有権(DUATs)を与えると書かれていることである。

これらの集約農業を促進する方策の真の目的は、土地を私有化し、外部からの投資が土地を得やすくすることにある。農民を(DUATsにより)定められた土地の境界線内に追い込むことで、投資企業が取得可能な土地を明確にし、州政府が企業向けの土地銀行(land bank)を設立することを可能にするという。また、マスタープラン案は、投資企業が土地を取得するにあたって、コミュニティとの交渉無しで済ませることを認めている。マスタープラン案にある「小・中農家土地登録」の項目では、その目的が「大規模農業、民間企業、中農による農業促進のための区画を明確にする」ことにあるとはっきり述べられている。さらに、「小農と新たな投資企業の間の協力・統合の環境をつくる」ための手段とまで書かれている。

2. 農民を企業的農業と加工業者との契約農業に追いやる

マスタープラン案では、ナカラ回廊をゾーンに区分けし、それぞれのゾーン内で栽培する作物、栽培手法、栽培者(小農、中農、企業)を定めている。ゾーン区分に基づき、商品作物栽培プロジェクトがいくつか示され、ある区分には大規模企業農業のみが定められており、残りは、大農・中農の混合や、小農による契約栽培方式などである。

同プランで提案されている委託契約農業は、この地域の小農らの生活を改善しないだろう。むしろ、彼らが作付する種子から生産物の販売までのすべてを、一つの企業に依存させることになるだろう。同プランで提案された委託契約農業プロジェクトの一つでは、投資企業は年率30%の収益を得る一方で、小農は5.5ヘクタールの内5ヘクタールを契約下でのキャッサバ栽培に使うことが強制される。

企業天国

マスタープラン案は、企業が投資によって20~30%という非常に高い年間収益を獲得できるビジネスチャンスをいくつか想定している。投資企業は、日本およびブラジルの両政府と投資家が出資するという「ナカラ・ファンド(Nacala Fund、20億ドル)」を利用できる。リークされたマスタープランでは、同ファンドの詳細は記載されていないが、他の筋からの情報によると、同ファンドは投資家保護の天国であるルクセンブルクで登録され、「アフリカ・オポチュニティ・ファンド1:ナカラ(Africa Opportunity Fund 1: Nacala)」として登録されるという[2]

マスタープラン案で示されるいくつかのプロジェクトの中には、投資家に広大な土地を提供するものも含まれている。例えば、ニアサ州マジュネ郡で計画されている「統合的穀物クラスター」は、縦断的に統合した1つの会社によって運営される。この会社は、6万ヘクタールに及ぶゾーン内で、9つの5,000ヘクタールの農場を経営し、主に輸出用に、トウモロコシ、大豆、ヒマワリを輪作栽培する。マスタープラン案によれば、「事業の収益性は高く、内部収益率は20.3%と見積もられ、9年で資本回収(償却)できる」という。同プランでは、こうしたプロジェクトを回廊の各地で展開し、増やしていくことを求めている。

企業は、マスタープラン案で提案されている数箇所の経済特区(SEZs)からも利益を得る。企業はこうした特区で納税および関税が免除され、さらにオフショア金融協定によって利益を得ることができる。これらの特区は、プロサバンナ事業が加工および貿易施設として計画する地域内に置かれる。しかし、これらの措置は、輸出型農企業の発展によって本来政府にもたらされるはずの収益を大幅に減じることになろう。

プロサバンナ事業の計画策定は2009年に開始されたため、海外投資家および現地の提携業者らは、事業予定地に既に膨大な面積の土地を取得しており、土地を巡って地元コミュニティとの間でたびたび争いが生じている。マスタープラン案の狙いは、この地域にさらに多くの投資を呼び込むことにあり、それは言うまでもなく土地紛争をさらに深刻化させることになる。

こうした争いの激化についてマスタープラン案が提案している主たる解決策は、「プロサバンナRAI(責任ある農業投資)ガイドライン(ProSAVANA Guidelines on RAI )」である。このガイドラインの中核は世界銀行が作成したRAIの7原則(Responsible Agricultural Investment)に基づくチェックリストであり、農民組織および市民社会組織から幅広く批判されているものである。「プロサバンナRAIガイドライン」は、ナカラ回廊へのアグリビジネス投資促進のために2013年8月までに発表される「民間投資のためのデータブック(Data Book for Private Investors)」の付属書とされる。

これらは、弱いガイドラインであり、その履行は任意である。マスタープラン案は、土地収奪からコミュニティを本当に守れるような新しい法律または規制を求めていない。同プランには、「ナカラ回廊への農業投資に関心を持つ民間企業は、企業内の行動規範や任意の自主規制に加え、これらの原則の遵守がリクエストされるだろう」と記されているだけである。

このマスタープランの結果として何が起こるか

現行のマスタープラン案を進めることによって、小農による農業は破壊されるであろう。それは、農民の種子体系、地元の知識、現地の食文化、および伝統的な土地管理の一掃を意味する。同プランは、農民を現在の土地から追い出すか、一定のわずかな土地に押し込めることになるだろう。その土地では、農民らは企業向けの契約栽培をさせられ、借金して種子、肥料および農薬の代金を支払うよう義務づけられるだろう。土地占有権を取得する小農においても、大企業や大規模農家のために即座に土地を失うという危険にさらされることになるであろう。

マスタープラン案の7クラスターのうち1つだけが、小農向けのもので、家族経営の食料生産を目指したものになっている。さらには、かつて失敗した緑の革命と同じ開発モデルが提案されているだけである。このマスタープラン案では、ナカラ回廊の小農のニーズやキャパシティが全く考慮されておらず、その活力も取り入れられてはいない。

本マスタープラン案の最大の受益者は企業である。土地および生産を支配し、生産された食料の取引を管理する。生産された食料は道路、鉄道およびナカラ港から輸出されるが、それらのインフラは、モザンビークと日本から提供された公的資金により、他の海外企業によって整備される。海外の種子、農薬および肥料会社は、企業型農業のアフリカへの大規模な拡大によって大儲けするであろう。

モザンビーク人にも、この事業によって利益を得る人もいる。例えば、ポルトガルで最も富裕な家族は、モザンビーク大統領の友人および家族が管理する国内企業ならびにブラジル最大の法人農企業1社と提携して、既にモザンビーク北部で土地を取得し、大豆を栽培するための合弁事業を立ち上げている。しかし、これらの利益とは、一般のモザンビーク人を犠牲にした上で成り立つものである。

マスタープラン案を見た我々は、プロサバンナ事業を中止させ、食料主権のために闘っているモザンビークの小農および人びとを支援するという決意を新たにする。

署名団体:

Justiça Ambiental, JA!/ FoE Mozambique (Mozambique)

Forum Mulher (Mozambique)

Livaningo (Mozambique)

LPM - Landless Peoples Mouvement (Member of Via Campesina - South Africa)

Agrarian Reform for Food Sovereignty Campaign (Member os Via Campesina - South Africa)

AFRA - Association for Rural Advancement (South Africa)

GRAIN

Friends of the Earth International (FoEI) (*The world's largest grassroots environmental federation with 74 national member groups and more than two million individual members.)

National Association of Professional Environmentalists (NAPE) / Friends of the Earth (FoE) Uganda

FoE Swaziland

Amigos da Terra Brasil / FoE Brazil

Movimiento Madre Tierra, Honduras

NOAH Friends of the Earth Denmark

GroundWork (South Africa)

Amigos de la Tierra España / Friends of the Earth Spain

Environmental Rights Action / FoE Nigeria

Sahabat Alam Malaysia/ FoE Malaysia

SOBREVIVENCIA, Friends of the Earth Paraguay

CESTA, FoE El Salvador

Earth Harmony Innovators (South Africa)

Ukuvuna (South Africa)

FoE Africa

Kasisi Agricultural Training Centre (Zambia)

( 2013年4月29日現在)


[1] マスタープランは、ゼツリオ・ヴァルガス財団(FGV)のコンサルタントのグループによって書かれた。彼らは、Galp Energia, Vale, Syngenta, Petrobras, ADM といったアグリビジネス企業のコンサルタントでもあり、Vigna Projetosとしても知られるVigna Brasilの幹部である。Galpは、ポルトガルの Amorim ファミリーに所有され、モザンビーク大統領ファミリーが関係する投資会社Intelec との合弁事業であるAgroMozを通じて、プロサバンナ対象地域での大規模な大豆栽培事業に投資している。Vigna Brasilは4I.Greenという会社と同じ所在地にあり、4I.Greenは、ナカラ回廊の大規模アグリビジネス・プロジェクトの主要な資金源であるナカラ・ファンドの実務責任を担っている。

[2] http://www.g15.org/Renewable_Energies/J2-06-11-2012%5CPRESENTATION_DAKAR-06-11-2012.pptxを参照。

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